たくや先生の小規模校×集団づくりブログ

全校児童50人にも満たない小さな小学校に勤務しています。小規模校の良さや課題、おもしろさを通して、小学校の豊かな学びを考えていきます。

単発の実践から「つながる」実践へ ~子どもたちと総括をしてみよう~

 

 

 

 

「総括」って何?

 

みなさんは、大きな行事や生活目標の節目に「総括」をしていますか。

 

「総括」と言っても、

 

「先生はみなさんが運動会の取り組みをとてもよくがんばったと思います。自分の競技だけでなく、係の活動もよくやっていました。この経験をこれからの学校生活にも活かしていきましょう」

「この陸上大会の取り組みを通して、チーム〇〇小が一つになったと思います。協力して取り組んだこと、みんなが支え合ったことを忘れずに、これからもがんばっていきましょう」

 

と、「教師が子どもたちをほめるまとめの一言」ではなく(上の二つはほめられてもいませんが)、「子どもたちが自分や自分たちの取り組みを自分たちでふり返り、成果と課題を明らかにしていく話し合い」のことです。

 

なぜ総括をしなきゃいけないの?

 

学校は「やらなきゃいけないこと」がいっぱいです。

なので、教師から「運動会があります」「応援団と放送係と用具係と・・・が必要です」「役割分担をします」というように、上意下達で物事が進んでいくことが多いものです。

それは行事でも、日々の取り組みでも、ちょっとしたお楽しみ会ですら、そういうスタートのものが多いです。

 

そうした学校生活の教師発信の取り組みが多くなってくると、だんだんと子どもたちはやらされ感を感じるようになります。

「言われたことだけやっておけばいいや」

「先生の機嫌を取っておけばいいや」

「楽しければいいや」

 

それでも、やらされた活動の最後を、教師がかっこいい言葉を並べて価値づけていくと、多かれ少なかれ気分よく取り組みを終えることができます。子どもも教師も。

 

しかし、その総括が見当違いだったり、教師の自己満足だったりすると、子どもたちはあまり成長しません。成長を自覚しておらず、自分たちの課題も見えないままです。

 

「前にこう言ったでしょ!」

「前にはできたでしょ!」

という現象が起きるのです。

 

 

子どもたちが自分たちの成長を実感し、課題に対して前向きに向き合っていけるようにするために、「総括」は大変重要な意義をもっています。子どもたちが自立し、自治を手にしていくために、「総括」は必要なことだと私は考えます。

 

 

 

総括をするとどんなことが起きるの?

 

総括をすると、自分たちの学級の文化が見えてきます。

それは、「協力」「団結」「思いやり」といった、学校の中で使い古されてきた実態のない「いい感じのキラキラした言葉や概念」ではなく、「伝えたいことを考えて、心を込めて励ましの言葉を考えることができた」「準備の時にカナミさんが手伝ってくれた」といった「事実から導き出される子どもたちの現実」です。

 

逆に、「本番だったのに前でコソコソ打ち合わせをしてしまった」「せりふを考えたのに覚えるまで練習をしなかったので、メモばかり見て話してしまった」などというマイナス面も受容していきます。それも文化です。そういったマイナス面の事実をもとに、課題を見出していきます。

 

出てきた課題は次の活動でクリアできるように、目的意識の中心に置きます。

これが「つながる」実践のカギです。

 

 

総括の「お作法」3つ

①「成果」と「問題点」の事実を子どもたちから吸い上げ、受容しよう

 

子どもたちには「成果」と「問題点」について、出来事を聞きます。

何も言わずに成果を問うと、

「協力できた」

「最後まで一生懸命がんばった」

といった、一見よさそうでいい感じの言葉が並びます。

 

でも、これだと中身のない「雰囲気総括」になってしまいます(私も総括に取り組み始めたころはこんな感じでした。先輩に「これだから実践が単発で終わるんだ」とバッサリ言われた記憶がよみがえります)。

 

「協力できた」→「船をつくるときにサアヤさんがペットボトルを押さえていてくれた」

「最後まで一生懸命がんばった」→「カズくんとフミくんが当日の朝まで真剣に練習を繰り返していた」

などと、「誰が」「いつ」「どのように」といったことを中心に詳しい出来事(事実)を出してもらいます。

 

問題点も同様ですが、子どもたちは問題点ばかりに目がいきがちです。

たらればの視点よりも、「困ったこと」や「残念だったこと」という視点に立つようにし、論点を整理してあげるといいと思います。「問題点」という問い方がうまくいかないようなら、言い換えてみましょう。

 

 

②そこから「課題」を見出そう(はじめは教師、だんだんと子どもたち)

 

出てきた「成果」はみんなで盛大に喜び、「問題点」はいくつか共通点を見つけて数個の「課題」にまとめてしまいます。ここで大切なのは課題をたくさん見つけることではなく、「今の私たちにとって重要な課題は何か」を子どもたちに問うことです。

 

問題点がたとえたくさん出てきてしまったとしても、次の活動で取り組むべき課題は1個か2個です。たくさんの課題に一度に取り組むと、目的意識がブレたり、薄れたりします。

 

なので、教師がまずは課題をまとめるモデルを示し、徐々に学級の代表や班長会、有志による課題設定の場をつくり、だんだんと主体を手渡していきましょう。

 

 

 

③「成果」と「問題点」と「課題」をまとめ、掲示しよう

 

「成果」「問題点」「課題」は整理して、教室の壁や黒板の片隅に掲示します。

話し合いによって明らかになったことが「見える化」されると、後々使えます。

 

「運動会のこの時につけた力をこういう何気ない場でも使えている!すごいね!」

という前向きな言葉がけに使ったり、

「運動会で注意されたこのことをまだくり返しているよ。みんなで気をつけようって確認したのにね」

ということに使ったりします。

 

何よりも重視すべきは、

「今取り組んでいるこの活動はこの課題をクリアするためにやっているんだ」

と子どもたちが確認できることです。

みんなで話し合ってみんなで決めたことは、みんなで守ります。

決めたことにはみんなで責任を持つということを教えます。

 

 

 

最近の私の総括は・・・

 

先日、近隣の自治体の高学年が集まっての陸上大会があり、私のクラスの子たちが壮行会を企画しました。

 

 

その総括では、

「進行役が上手に進めるために必要なせりふを自分たちで考えていた」

「伝えたいことを考えて、心を込めて励ましの言葉を考えることができた」

「応援リーダーが大きな声でかけ声をかけたので、わたしたちも大きな声で応援できた」

などのよかった事実が出され、

 

「自分たちで話すことを考える力がついた」

「みんなの前で大きな声で堂々とやると他のみんなもがんばれることがわかった」

という成果がまとまりました。

 

一方で、

「応援リーダーが前に出たときにその場でコソコソ打ち合わせをしていた」

「せりふを覚えるほど練習しなかった」

「メモばかり見て前の高学年を見れなかった」

という事実が出され、

 

「コソコソ打ち合わせをしなくていいくらい練習をしよう」

「少しはメモを見てもいいけど、きちんと顔を上げて話そう」

という課題がまとまりました。

 

それらをクリアするための取り組みはまた改めて書きますが、事実から見出された課題は、次へのエネルギーとなって子どもたちをイキイキとさせていきます。

 

 

「単発の実践」「雰囲気総括」ではなく、子どもたちが実感を伴うような「総括」をしてみませんか。きっと、子どもたちが変わります。