シリーズ「小規模校の強みから学びを考える」② 小規模校で子どもたちの学習権の保証を!
みなさんこんばんは、たくやです。
「後悔などあろうはずがない」と言って引退していくイチロー選手、改めて尊敬します。
胸を張れるほど長くもない教師人生ではありますが、後悔ばかりが糸を引きます。
出勤の朝、車のエンジンをかけたくないほど打ちのめされた日もありました。
それでもあきらめずに立ち上がり続けるのは、目の前の子どもたちに救われているからなのだと思います。
いつか教師人生に幕を下ろすとき、「後悔ばかりですが、子どもたちのおかげで立ち上がり続けることができました」と胸を張りたいと思います。
さて、今回は「小規模校の強み」を「子どもたちの学習権」という視点で考えていきたいと思います。
「全ての子どもに学習権の保証を」
この言葉は、映画「みんなの学校」で有名な木村泰子先生の言葉です。
先日私が住む市で行われたPTAの集まりにもいらしていました。
木村先生はステージ上でマイク一本を両手で握り、直立不動で語ります。
時に笑いを交えながら、私たちの子ども観をグワングワンと揺さぶります。
木村先生が使う言葉の一つ一つに、木村先生の「どんな子どもも尊重され、自分らしくいていいんだ」という教育哲学が表れていました。
PTA向けの講演でしたが、私たち教員にとっても有意義な内容がたくさんありました。お近くの自治体に木村先生が来るときはぜひ講演に行くことを心からおススメします。
さて、みなさんのクラスでは「すべての子どもに学習権を保証」できていますか?
最近の子どもたちは、生活スタイルの多様化で様々な生きづらさを抱えた子が教室に何人もいることが多いです。
学習の定着に課題を抱える子、おうちの人とご飯を一緒に食べられない子、スポ少のレギュラー争いが友達のヒエラルキーにそのまま反映されてしまう子など、その事情は様々で、学校の中だけで解決することは難しいのが現状です。
そういった子たちに、「がんばれ」「やる気を出せ」「甘えるな」と、画一的な「毅然とした指導」で立ち上がることを促す指導、どう思われますか?
「人の事情も知らないで」
「結局この人もおれたちの気持ちなんかわかってくれない」
「暑苦しいだけじゃん、こんなやつ」
そんな子どもたちの声が聞こえてきそうです。
職員室の一人一人がそれぞれ異なる事情を抱えているように、子どもたちだっていろいろなことを経験しているのです。
それらを乗り越えるために必要なことは、「対話」です。
子どもたちと「会話」ではなく、「対話」はできていますか
木村先生は校長室を「やり直しをするところ」と位置づけ、「対話」を通して子どもたちが立ち上がることを促します。
校長室での「対話」だけでなく、子どもたちの作文を集めたり、困っている子にあえてクラスメートに事情を聴くよう促したりと、とにかく一人ぼっちにならないように手立てを組んでいきます。
ここであえて「会話」ではなく「対話」という言葉を使っているのは、子どもたちの本音と向き合う機会がきちんとあるかどうかということが肝心だからです。
私が大規模校に勤務していたころ、「一日に最低限一回は話そう」という教えを先輩教員から教わりました。律儀に守ろうとがんばっていましたし、それが子どもとの信頼関係を作ることに繋がるのだと信じていました。でも、私がその時していたのは「対話」ではなく「会話」だったのです。子どもたちが心を開いてくれたかと言われると、答えは「NO」です。子どもたちとはギクシャクし、その年の出来事は今でも私の後悔です。
子どもたちが「この人は本音を言うに値する人間だ」という風に考えるような関係を作るということは容易ではありません。だからこそ、小規模校できめ細やかな人間関係の構築を目指すことが、教師にとって貴重な経験となります。
誤解してほしくないのは、私は大規模校が嫌いなわけでも、不適切だと物申したいわけでもなくて、「小規模校だからといってマイナスイメージをもってほしくない」というだけです。小規模校こそ成長の機会だと思ってもらいたいと考えています。
人数が少ないからこそできることがある
さて、「教育効果が下がる」「制約が生じる」と文科省にレッテルを張られている小規模校ですが、本当にそうでしょうか。
小規模校でも「目的に応じた手立て」を改めて組んでいくことで、子どもたちの教育効果を上げていくことは十分に可能です。
また、「制約」は人数だけではなく、地域性や担任の先生のキャパシティ、時間やお金など、様々な要素が複雑に絡み合うものです。
その「制約」の中でできることを考えていくだけのことであって、「小規模校だから」という理由でいろいろとあきらめる必要はありません。
小規模校の2つの強み①子どもを見取る目が行き届く
授業でも、生活でも、行事でも、「子どもたちが何をしているのかを見取る」ということは教師として切り離せない営みでしょう。
子どもの頑張りを見取り、認めること
困っている子のSOSサインを見取り、子どもにパスを出すこと
子どもの問題行動に対応したり、サインに気づいたりすること
など、母数が少ないからこそ「教師の見取り」の精度は上がります。
経験の短い若手の先生ならなおさらです。
「全員と一回ずつ」などと言わずに、見通しをもって徐々に「深い付き合い」をしていくという方針が小規模校だと可能になります。
小規模校の2つの強み②子どもの体験の密度が濃い
子どもたちがゲストティーチャーと直接かかわる機会
子どもたちが全校の前で話したり、リーダー性を発揮する機会
クラスの取り組みや委員会の取り組みが全校に波及していく手ごたえを実感する機会
など、人数が少ないからこそフットワークが軽くなったり、効果が出るのが早かったりう教育活動もあります。
大規模校で縦割り活動をしようとすると、1グループが15~20人になったり、活動場所の制約が大きかったりしますよね。「全グループが一度に校庭でグループごとに遊ぶ」なんて日には、収拾がつかなくなるのは目に見えています。そういったことはアイディアと手立ての見直しで何とかしていくものですが、少なくともすぐには難しいでしょう。
子どもたちの数が少ないからこそ、そういった課題にはすぐにメスを入れられますし、子どもたちのアイディアを実現させやすいという側面もあります。活動の保証もしやすいです。
こうした強みを生かした取り組みを通して、子どもたちに学習権を保証しやすいのが小規模校の強みです。具体的な教育実践はまた後日改めて。
ただ、小規模校であぐらをかいている人もいるのも事実。次回は小規模校で置き去りにされやすいことについて考えてみたいと思います。